新明解国語辞典を読む 009 | |
更新:2006年7月26日 |
本当にこれって国語辞典! 論理学編 |
以下の必要は第三版まであったものです。 ●ひつよう[0]—エウ【必要】 中略 【—条件】それを事実であると判断する上に、例外無しに備えていなければならない条件。 中略 「田中さんならば、入れ歯が十本有る」という例において、「入れ歯が十本有る」ことに対して、その人が田中さんであることが十分条件であると言う。 必要条件の説明に「田中さんの入れ歯が十本」というのは、吹き出してしまうが、きっと全国の田中さんからクレームが来のだろう。その反省からか第五版は以下のように落ち着いてしまった。 ●【必要条件[5]—エウ—】 〔数学・論理学で〕その条件が成立しているならば 必然的に成立しているはずの他の条件の、元の条件に対する称。「PならばQ」が真の時、QはPであるための必要条件。例、「aとbは共に正である」という命題をPとし、「aとbの積は正である」という命題をQとした場合。〔日常的な用法では、それが△事実であると判断する(成り立つ)上で必要な「条件(一)」を指す〕 ●【十分じゆうぶん条件[5]ジフ—】 〔数学・論理学で〕その条件が成立していると判断するに足る論理的根拠を与える他の条件の、元の条件に対する称。「PならばQ」が真の時、PはQであるための十分条件。 しかし、田中さん入れ歯の例の方が面白い。 ●じょうオけん[3]デウ—【条件】 (一)ある物事が成立するために△必要な(制限を要する)事柄。 中略 (二)〔数学で〕変数を含む命題の称。変数に具体的な数や図形などが代入されると、その真偽が定まる。 例、「xは正の数である」「Fは対角線の長さが等しい四角形である」。〔狭義では、必要十分条件を指す。例、「未知数xの満たすべき—」〕「—を満足する〔=変数にそれを代入すると、命題が真となる〕/収束の判定—/—式[3]・初期—・境界—」 岩波さんの必要条件 【—条件】 「Bという事が成り立たなければ必ずAということも成り立たない、すなわちAが成り立てば必ずBも成り立つ時、そのAに対するBのこと。▽逆にBに対するAを「十分条件」と言う。 【十分条件】 「Aという事が成り立てばそれだけで必ずBということも成り立つ時、そのBに対するAのこと。▽逆にAに対するBを「必要条件」と言う。 解説を読んで自然科学系の語彙は全般的に岩波さんの方が明解。 新解さんの方は余計なことを解説し過ぎである。 ところで入れ歯10本の田中さんですが、これまた漱石同様いろんなところに登場する。いずれ漱石ともども紹介する。 ●しゅうごうオ[0]シフガフ【集合】 (三)〔数学で〕人間の観察・思考の対象としてはっきり識別出来るものの中で、特定の△性質を持つ(条件にあてはまる)ものを一まとまりとして考えたもの。〔「大きい数の全体」というようなものは、その範囲が不明確なので、集合とは見なさない〕「十八と二十四の公約数の—は、一・二・三・六の四つの元ゲンから 成る/—の要素/有限—[5]・無限—[4]・—論[3]・部分—」 ●こうオやくすう[4][3]【公約数】 〔数学で〕二つ以上の自然数が与えられた時、それらに共通する約数の称。例、12と18の公約数は、1・2・3・6。〔多項式の場合にも用いる〕←→公倍数 【最大公約数[8]】 公約数のうちで、最大のもの。例、12と18の公約数1・2・3・6のうち、最大公約数は、6。〔多項式の場合にも用いる。また俗に、さまざまな意見の間に見られる共通部分の意にも用いられる〕 ●こうオばいすう[3]【公倍数】 〔数学で〕与えられた二つ以上の自然数に共通の倍数。例、2と3の公倍数は、6・12・18など。〔多項式の場合にも用いる〕←→公約数 【最小公倍数[7][9]—セウ—】 公倍数のうちで、最小のもの。例、4と6の公倍数12・24・36…などのうち、最小公倍数は、12。〔多項式の場合にも用いる〕 集合は漢数字で表記されているのに対して、公約数、公倍数ではローマ数字で解説されている。いったいこの不統一はなにか? ●さんだんろんぽうオ[5]—パフ【三段論法】 大前提・小前提・結論の三つの判断から成る推理の方式。例、すべての人は死ぬ〔大前提〕、彼は人である〔小前提〕、ゆえに、彼は死ぬ〔結論〕。 分かりやすいが、例がよくない。新解さんにとって彼って誰のこと… 一方、岩波さん ★さんだんろんぽう【三段論法】 〔論理〕推理のしかたの一種で、三つの判断の組合せから成る形式。例、A「動物は生物だ」B「犬は動物だ」という判断から、C「犬は生物だ」が導ける。▽Aを大前提、Bを小前提、Cを結論という。この例で「生物」を大概念、「犬」を小概念、「動物」を大概念という。 岩波さんはさらに分かりやすい。しかし、面白さは新解さんです。 ●しゅじ[1]【主辞】 〔論理学で〕「AがBである」という判断において、Aの称。→賓辞・繋(ケイ)辞 ●ひんじ[1][0]【賓辞】 (一)〔論理学で〕ある命題において、主辞について述べられる概念。「犬は動物だ」の「動物」の類。→主辞・繋辞(ケイジ) ●けいじ[0]【〈繋辞】 〔説明の 言葉の 意〕 命題の 主辞と 賓辞とを連結する言葉。 例、「時は金なり」「Time is money.」の太字の部分がそれ。コプラ。 四版以降、A,Bなどの符号が多用されるようになり、無難な表現になってた。読む方は面白みがなくなったが、より明解にということで、このような方針になったのだろう。 |
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