新明解国語辞典を読む 005 | |
更新:2006年4月26日 |
国語辞典とは 2 |
新解さんの、自己表明のつづきと「国語辞典」はこうでなければならないという紹介のつづきです。 ●いきょ[1]【依拠】 —する 書物を著わしたり規則を定めたりする時などに、その根本主張を指示するよりどころとなるもの。 「泰西辞書に—して〔=(a)基づいて。 (b)ならって〕新たに本邦独自の辞書を創始せり」 泰西とは「〔日本から見て〕先進国としての西洋。欧米。」ということ。 出展の英国の辞書名を忘れてしまいましたが、こんな解説があるそうです。 【大麦】スコットランドでは人が食べるが、イングランドでは家畜の餌。 「本邦独自の辞書を創始せり」とはまた大上段に構えたものであるが、影響されていると思われる。 ●せつようオ[0]【節用】 〔←節用集[3]。「節用」は、しょっちゅう使う意という〕 室町時代の中ごろ作られ、明治時代まで一般の間に広く行われた、いろは引き・意義分類体併用の実用国語辞書。 節用を手本としたのではなく、泰西辞書を依拠独自の辞書を編纂したと、それも文語調で述べているところが凄い。 ●うわおき[0]ウハ—【上置(き)】 (三)体裁を整えるために看板として かつぐ著名人。辞書・全集の監修者や、旅芝居の立役者など。 新解さんの上置は「金田一京助」となるのでしょうか? (第二版まで) ●いも【芋】 …… (二)〔芋を主食とするほど貧乏な意〕程度が低くて、論じるには足りない。「—侍〔=貧乏で志の極めて低い武士〕・—辞書〔=大学院の学生に下請けさせ、先行書の切り貼りででっち上げた、ちゃちな辞書〕 新解さんは同僚が「大学院の学生に下請けさせ」ていたのを知っていたのでしょうね。 さすがに五版ともなると、芋辞書はなくなっています。 「いも」も貧乏の代名詞でもなくなってる。 ●いも[2]【芋】 (一)草の根で主食の代用となるもの。丸みを帯びたものが多い。 サツマイモ・ジャガイモ・サトイモ・ヤマノイモなど。〔広義では、ダリアなど草花の根をも指す〕 (二)かっこうが余りよくない人をあざけって言う言葉。 [表記]「〈薯・〈藷」とも書く。 【芋の煮えたも御存じない】 世間の普通の人が知っている程度のことも知らないたとえ。 【芋を洗うよう】 〔サトイモは桶オケにたくさん入れてかきまぜて、外皮を取り除くことから〕おおぜいの人が集まって混雑している形容。 直接に芋辞書という語彙はなくなったが、「のり」と「はさみ」の項目でわざわざ(よけいなことを)述べるのが新解さんです。 ●はさみ[3] 「のりと—で作った辞書〔=→のり〕」 ●のり[2]【〈糊】 —とはさみだけの仕事〔=自分の頭脳を使わずに、他人の著作を切りばりして自著とするやっつけ仕事〕 ●いっき[1]【一気】 「ひといき」の意の漢語的表現。 【一気〈呵成かせい[1]】 …中略 【一気に[1]】(副) …(三)…「従来の辞典ではどうしてもピッタリの訳語を見つけられなかった難解な語も、この辞書で—解決」 この辞書だから見ている辞書ということで新解さんになります。 四版で現れ、五版では消えていますが、根はそう思っているのでしょう。 ●しつむ[1][2]【執務】 —する 一定の勤務時間の間、書類に関する事務を取り扱ったり課せられた業務についたりすること。〔作家の創作活動や学者の辞書編纂活動などは、通例この中に含まない〕 辞書編纂活動は(作業とも言わないようだ)一定の勤務時間の間に行なうものではないためわざわざ断っているのも面白いが、新解さんはなんだと言うのだろうか? 趣味だろうか ●やごえ[1]—ゴヱ【や声】 「や」といった、昔の「掛け声(二)」。えい声[1]。〔現在の「よいしょ」に相当〕 [表記]「矢声」とも書くので、「矢を射る時の声」という俗解も行われ、「矢叫び」と同意と誤解する辞書も有る。 「同意と誤解する辞書」の一つが広辞苑。 ●しんてん[0]【進展】 —する 事件が進行し、局面が展開すること。〔俗に、進歩・発展の意に誤用される〕 「目ざましい—を見せる/急—を遂げる/捜査が—しない」 新解さん以外の辞書は誤用していることになる。これは新解さんの言い分ですが初版から変わらない。 「のりとはさみ」同様余計なこととも思います。これが後に世にも珍しい「国語辞典事件」になるとは思いもよらなかった。(いずれ紹介します) |
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