新明解国語辞典を読む 008
新明解国語辞典を読む 008
  更新:2006年7月25日

本当にこれって国語辞典! 物理学編
●すうしき[0]【数式】
「式(三)(A)」と、「式(三)(B)」のうち 数学関係のものの総称。「—抜きに物理学を説明するのはむずかしい/—処理」

 物理学の場合は数学とは違い数式抜きの説明。一応国語辞典的解説と言えるが、物理学に関しても岩波さんの方が得意だな。

●りょうオ[1]リヤウ【量】
物体(の集まり)の持つ物理的な広がり〔=どのくらい有るか、多少・大小の程度など〕と、物理的な性質の強さ〔=どの程度であるか、度合・割合など〕との総称。前者の例、「個数・長さ・面積・体積・時間・質量・エネルギー」。後者の例、「速度・温度・密度・濃度・確率・単価」。〔単位を定めて測ることにより、数値で表わすことが可能。離散量と連続量とに大別され、狭義では連続量を指し、離散量を表わす「数カズ」と対比される。また日常表現では、厳密な意味では数値化されないものをも指す。例、「△知識(勉強・仕事)の—」〕「—から質への転換/質より—が問題/—〔=目方〕を ごまかす/薬の—を減らす/物ブツ—・定—・適—・音—・供給—・練習—・分子—・度—衡・数—・スカラー—」

●りょうオし[1]リヤウ—【量子】
原子・電子のエネルギーなど、離散的な値をとる物理量の最小単位量。「エネルギー—[6]・—力学[5]」

●【運動の法則[0]—ハフ—】
ニュートンが確立した、物体の運動に関する基本的な法則。慣性の法則=第一、加速度の法則=第二、作用反作用の法則=第三。


岩波さん
★りょうし【量子】
[物理]エネルギー・電気量などある種の物理量がある単位量の整数倍として表される場合、その単位量を量子という。—りきがく【—力学】分子・原子・素粒子など微視的なものの力学をあつかう理論体系。—ろん【—論】量子力学を基礎として物理現象を解明しようととする理論の総称。

 下線にみるように岩波さんの方がより正確である。
 しかし、【量】は新解さんの方が勝っており、【運動の法則】は岩波さんにはない。
 広辞苑は引用しないが、やはり「平明を装って」いる。いろいろ語彙も登場するが、これこそすべて物理学辞典の範疇で解説は中途半端。
 かように新解さんがやたら、自然科学系語彙の解説にも力を入れだしたのは第四版からである。いったい何があったのか?  訳は想像するしかないが編者にその方面の方が加わったのだろう。


第三版   第四版   第五版
見坊 豪紀   金田一京助   金田一京助
金田一春彦   柴田 武   山田 忠雄★
柴田 武   山田 明雄   柴田 武
山田 忠雄★   山田 忠雄★   酒井 憲二
金田一京助     倉持 保男
    山田 明雄
 ★は主幹
 すなわち自然科学系の語彙担当を山田明雄という方が担当しているのではないかと思う。
 主幹の山田忠雄氏は1996年2月に79歳で亡くなっています。新聞で新明解国語辞典の編者死亡という記事を見た記憶がある。
 新解さんがこのような辞書になったのは山田忠雄さんの編集方針だったそうです。
 山田明雄氏の父親が忠雄氏かどうかは不明だが、それを匂わす、こんな用例がある。

●の
[一](格助)
 …
(六)同格であることを表わす。
「友達—田中君/店長—川口さんを呼んでください/お父さん—邦雄博士は本当の人格者でした/二—次」〔(四)の口頭語形は、「ん」〕

 邦雄博士というのは忠雄氏お父さんではないかというのは考えすぎか。

 0   1   2   3   4   5   6   7   8   9 
Copyright 2006 uSolutions