新明解国語辞典を読む 002 | |
更新:2006年3月14日 |
「ばかちょんカメラ」はどうなった |
どの辞書にも「ばかちょんカメラ」は載っていませんが、カメラはなくなったわけではありません。 カメラ店の店員は間違っても使ってはならない言葉で、最近では「コンパクトカメラ」と言われています。 しかし、コンパクトカメラでは今一つピンと来ない気もしますが、カメラは全自動があたりまえになっているので、よい名称にしたなとも思います。 さらに現在はデジカメ(デジタルカメラ)が普通になり、「ばかちょんカメラ」は死語になってしまったと言ってよい。従来の新解さん解説だとさしずめこうなるのだろう ●コンパクトカメラ 銀塩フィルムによる全自動小型カメラ。「ばかちょんカメラ」は老人語 語源的には、馬鹿でもチョンでも、簡単に写せるカメラと言うことですが、これが差別用語であるとされ表向きには使用されなくなりました。 バカは精神障害者に対する差別表現であり、チョンは在日韓国・朝鮮人に対する蔑視表現であるとなったのです。 有名な「ばかちょんカメラ」事件が1975年にありました。(私は覚えていません) 同年の二月にエジプトから帰国して、NHKに出演した三笠宮が「バカチョンカメラをもって行くべきだった」と語り、宮家でも普通に使われている言葉とバレてしまったとともに、格好の攻撃の的となり抗議が殺到したとか。この他にもマスコミにこの言葉がたびたび登場し問題になった。 一方、「ばか」も「ちょん」も次のように、決して差別や蔑視として使われるものではないとの見方もあるのですが、ちと苦しかったのですね。 「バカらしい」「物価のバカ高さ」「正直者はバカをみる」 『ちょんはちょっとした点や、芝居の拍子木』であり差別用語ではないという見方。 「ばか」の見出し語を全文引用します。 ●ばか【馬〈鹿】 〔雅語形容詞「はかなし」の語根の強調形〕 [一][1]—な (一)記憶力・理解力の鈍さが常識を超える様子。また、そうとしか言いようの無い人。〔人をののしる時に最も普通に使うが、公の席で使うと刺激が強過ぎることが有る。また、身近の存在に対して親しみを込めて使うことも有る。例、 「あの—《=あいつ》が/— —《=女性語で、相手に甘える時の言い方》」〕 「—の高笑い/人を—にする〔=(a)馬鹿者のように扱う。(b)その存在を無用視したり極端に軽視したりする〕/—にならない〔=軽く見過ごせない〕/ —者[0]・薄—」 ←→利口 (二)社会通念としての常識にひどく欠けている△こと(人)。 「人から物をもらってろくにお礼も言わない—が有るか/専門—〔=専門外の事については常識的な判断すら出来ない迂遠ウエンさを批判した語〕・学者—[4] ・役者—[4]」 (三)不合理さ・つまらなさが常識を超える様子だ。 「そんな—な事が!/—な目にあう/—を見る」 (四)「ばか貝」の略。 [二](造語) 〔口頭〕普通では考えられないほど、程度が極端だ。 「—騒ぎ[3]」 ——さ[1][2] 「—加減[4]」 [表記]「馬〈鹿・〈莫迦〉・馬稼・《破家」は、いずれも借字。 ●ちょん[1] (一)〔芝居の始まり、終りなどの〕拍子木を打つこと。また、その音。 「—になる〔=(a)何かの事情で、そこで終りになる。 (b)くびになる〕」 (二)句読点や、何かの印、その場面で頻用する字の代用記号としての「、」。 (三)知恵が少し足りない△こと(人)。 (四)「—の間マ〔=ほんのちょっとの間〕」 「ばか」の語源が「はかなし」とは知りませんでした。 バカの解説のばかっ丁寧なこと。下線の部分の「ばかばか」の解説までする念の入れようです。 三版、四版の「ばか」を見てびっくり。 「あの—《=あいつ》が/— —《=女性語で、… [=(A)馬鹿者のように扱う。(B)その存在を無用視したり極端に軽視したりする]・—にならない [=軽く見過ごせない]・」—でもちょんでも[=どんな馬鹿でも]」 ううん、これじゃ「ばかちょんカメラ」は蔑視表現だと言われてもしかたないですね。さすがに五版では完全に消え去っています。 参考文献 差別用語の基礎知識 高木 正幸 土曜美術社 |
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