新明解国語辞典を読む 007
新明解国語辞典を読む 007
  更新:2006年5月21日

本当にこれって国語辞典! 自然科学系の語彙
 新解さんが理想の国語辞典を目指したため、国語辞典から逸脱したのではないかについて述べます。

●だいにゅう[0]—ニフ【代入】
—する
(一)〔数学で〕式の中の ある変数をすべて、一定の数値や他の式などで置き換えること。例、「2x+3 のxに5を—すると、式の値は13になる〔=『2x+3 に x=5 を—する』とも言う〕」。

 私の知っている限り国語辞典で、代入の説明に数式が出てくるのは新解さんだけ。
 さらに念が入っている。


●エックス[1]【X・x】
(一)〔数学で〕未知数を表わすために最もよく用いる記号。
(二)未知の数。また、未知の事物。エッキス[1]。

●たこうオしき[2][0]—カウ—【多項式】
〔代数学で〕変数として着目している(幾つかの)文字の累乗と定数との積の形をした有限個の「項(二)(A)」 から成る 「式(三)(A)」。整式。 例、 x3−2x−5 はxの多項式、 ax2+2bxy+cy2 はxとyの多項式。
〔広義では項が一つしか無いもの すなわち 単項式も含むが、狭義ではこれを除外する〕

 新解さんが微積分を説明しようとするとこうなる。

●びぶん[0]【微分】
—する 〔数学で〕その函数(カンスウ)について、独立変数の限りなく小さい変化に対する、従属変数の変化の割合〔=微分係数〕を求めること。微分法。「位置を表わす函数を時間で—すると速度が得られる/函数のグラフの接線の傾きは—係数に等しい」→積分(二)

 (第四版)
 与えられた函数について、独立変数の限りなく小さい変化に対する、従属変数の変化の割合〔=微分係数〕を求めること。

 (第三版)
 yがxの函数の時、xの非常に小さな変化に対する、yの変化の割合(を求めること)。

 五版と四版は「その函数」か「与えられた函数」の違いだけ、三版は上記の引用だけで用例がない。多分明解ではない感じたのだろう。

●せきぶん[0]【積分】
—する 〔数学で〕
(一)独立変数xが一定の範囲を動く時に、函数(カンスウ)のグラフとx軸との間に出来る図形の面積などを求めること。また、その結果。〔これを「定積分[3]」と言う。函数値にxの微小な変位 を掛けて足し合わせたものの極限値として得られる〕「断面積を表わす函数を—すると体積が得られる/定—の値は、被—〔=積分される〕函数の原始函数が、その区間の両端でとる値の差として求められる/—値[3]・—変数[6][5]」
(二)与えられた函数に対し、微分すると、ちょうどその函数になるような函数〔=原始函数〕を求めること。また、その結果。〔これを「不定積分[4]」と言う〕「二次函数を—すると三次函数になる/—定数」□微分

 だれを対象として解説しているのかわからないが、国語辞典の解説の範疇を逸脱していると思う。

岩波さん
★びぶん【微分】《名・ス他》
変数の微小な変化に対応する、関数の微小な変化の割合の極限(=微分係数)を求めること。その関数の変化量。

 微分に関しては、岩波さんの方が簡潔に説明しており、国語辞典としてはこちらの方が良いのかなと思います。
 函数を岩波さんは関数と表記している。


新解さん
●かんすう[3]【〈函数】
〔functionの、中国での音訳。「函」は「独立変数を含む」という意味も兼ねる〕〔数学で〕二つの△変数(変量)の間における、一つの変数〔=独立変数〕の値が決まるに従って もう一つの変数〔=従属変数〕の値がちょうど一つ決まるというような△規則(関係)。
〔独立変数は複数個のこともある〕「温度は場所と時間の—/一変数〔=独立変数が一個の〕—・多変数—・—値」[表記]「関数クワンスウ」は、代用字。

岩波さん
★かんすう[3]【関数・x函数】
ある集合の元。またいくつかの集合からそれぞれにとった取った元の組に応じて、その集合(のうちの一つ)または他の集合、一つの元(これを「関数値」という)が定まるという対応関係。「三角—」「多変数—」「成績を努力の—と見る」▽数に限らなくてよい。「函」はfunctionの'fun'の部分の中国音訳、「関」はその書き替え。

 中国では「函」はファンと言うことが岩波さんを見ると分かり、明解である。
 函は非常用漢字であるため、関に統一しているのですね。まじめな優等生。

 客観的には岩波さんの方に軍配を上げたい。新解さんは自己陶酔しているきらいがある。
 ただ、新解さんの姿勢はみならうべき。「函」と「関」は意味が違うから、functionは函数と頑固に表記している。


 0  目次   1   2   3   4   5   6   7   8   9 
Copyright 2006 uSolutions