新明解国語辞典を読む 003
新明解国語辞典を読む 003
  更新:2006年3月21日

「ばか」のつづき
 一方岩波さんは以下の解説で、まぁ普通です。これが国語辞典というものでしょう。

●ばか【馬鹿・】《名・ダナ》
(1)知能の働きが鈍いこと。利口でないこと。また、そういう人。「—とはさみは使いよう」(使いようによっては役に立つ意)「—の一つ覚え」(ある一つの事を覚えのを得意がって、それが当てはまらない時でもいつもそれを言い立てること)「—にする」(軽く見る。あなどる)「—にならない」(あなどれない)
(2)まじめに取り扱うねうちのない、つまらないこと。また、とんでもないこと。「—なことをしたものだ」「—を見る」(つまらない目にあう)。じょうだん。「—を言う」
(3)役立たないこと。きかないこと。「ねじが—になる」
(4)《「—に」の形で、また接頭語的に》普通からかけ離れていること。度はずれて。非常に。「—に暑い」「—正直」「—ていねい」
(5)「ばか貝」の略。

 新解さんの「ばかばか」は第三版から登場しており、「恋愛」もそうであるようになにか大きな変化があったものと思われます。
 前回は「ばかばか」に着目しましたが、解説の中で次の部分に、おやっと思った方もおありのことでしよう。

第五版
「人をののしる時に最も普通に使うが、公の席で使うと刺激が強過ぎることが有る。」

 おせっかいだなと思うのですが、これを新解パワー(赤瀬川原平)と言うそうです。
 これも、初版から次のように変化しています。

初版、第二版
「人をののしる時に一番普通に使う語。公の席では刺激が強過ぎるので使わない方がいい」
第三版
「人をののしる時に一番普通に使う語。公の席では刺激が強過ぎることが有る。」

 一番普通 → 最も普通
 ので使わない方がいい → ことが有る

「一番」が「最も」に変化し、四版からあいまいな表現になっています。「ばか」は一番普通に使う語ではなくなったからか?
「使わない方がいい」とは余計なお世話だとクレームが来たのか、はたまた公の席でもたびたび聞かれるようになったのか、第三版で削除されています。世の中が変化したこともあるでしよう。

 新解さんの「ばか」づくし
●あほうオ[2]アハウ
 —な ばか(な者)。〔関西方言では「あほ[2]」と言う〕
 ——さ[2][0]
[表記]「〈阿呆〉・〈阿《房」は、いずれも借字。
【あほう払ばらい[4]—バラヒ】
 江戸時代、武士の資格を奪って追放した刑罰。


●あんぐ[1]【暗愚】
 —な/—に 「ばか」の意の漢語的表現。

●あんくん[0]【暗君】
 愚かな△国王(殿様)。 →名君・明君
●あんしゅ[1]【暗主】
 ばかな△国王(殿様)。 →名主

 暗君、暗主同じ意味と思うが微妙に違う。
 解説した日が違うのか、暗主で暗君に同じすべきか?


●あんぽんたん[3]
 —な 〔口頭〕 間(マ)が抜けていて、愚かな△様子(人)。あほう。

 あんぽんたんは中国語の王八蛋が語源との説もあるが、いずれ詳細に述べる。

●うすばか[0]【薄ばか】
 —な/—に 言動の全体にわたって、動きや反応が鈍い△様子(人)。

●おこ[1]ヲコ
「ばか」の意の雅語的表現。
「—の沙汰サタ」
[表記]「〈烏滸〉・尾〈籠」は、借字。

私は「おこ」は知らなかった。

●かぐ[1]【下愚】
〔古〕どうしようもない ばか。
「—は移るべからず〔=直しようがない〕」
●ぐしゃ[1]【愚者】
 知恵の△無い(回りかねる)者。ばか。
「—も千慮に一得有り」→賢者
●ぐとく[0][1]【愚〈禿】
〔頭を丸めているばか者の意〕僧が自分を指す謙称。〔狭義では、親鸞シンランの自称〕
●ぐぶつ[0][1]【愚物】
 ばかな人間をののしって言う語。
●ぐまい[0]【愚〈昧】
 —な/—に ばかで、道理に暗い様子。
 ——さ[0]
●ぐれつ[0]【愚劣】
 —な/—に 当人はすこぶる満足して何か やっているようだが、はたから見れば全く ばかげた事にしか見えない様子。
「—な〔=ひどく低級な〕小説」
 ——さ[0][3]
●さんたろうオ[0]—ラウ【三太郎】
「あほう」の異称。
「大ばか—」
●しれもの[0]【《痴(れ)者】
 ばかもの。あほう。
●たれ(造語)
「くそたれ・はなたれ」から類推して、否定的な意味を強めるために添える語。
「ばか—・あほ—」
●たわけ[3][0]タハケ【《戯け】
〔動詞「戯ける」の連用形の名詞用法〕
(一)ふざけて ばかげたことをすること。
「—をつくす/—もいいかげんにしろ」

(二)〔←たわけ者[0]〕 ばか(もの)。
「この—め」
[表記]「{白痴}」とも書く。
●ちぐ[1]【痴愚】
「ばか」の意の漢語的表現。
●ちじん[0]【痴人】
「(度の過ぎた)ばか」の意の漢語的表現。
[表記]「〈癡人」とも書く。
●へげたれ[0]
〔江戸時代の口頭語で〕ばか。
「—やのう」
●べらぼうオ[0]—バウ【〈篦棒】
 —な/—に 〔口頭〕
(一)ばか(もの)。
「—め/そんな—な話が有るものか」
(二)程度がひどい様子。
「—に暑い」
 ——さ[0][3]
●むち[1]【無知】
 —な
(一)その方面の知識が無いこと。

(二)頭の働きが非常に鈍いこと。ばか。
(三)読み書きに関する知識が無いこと。
「—文盲」
[表記](二)のもとの用字は、「無〈智」。
●ようオぐ[1]【庸愚】
 —な 平凡と言うよりは、むしろ、ばかに近い様子。
●よたろうオ[0]ヨタラウ【よた郎】
(一)ばかもの。
(二)うそつき。
[表記]「よた」を「与太」と書くのは、借字。
●ろどん[0]【〈魯鈍】
 —な 「ばか」の意の漢語的表現。
「—な人」

 三太郎、よた郎が代名詞のバカ。「たれ」まで解説しているのはさすが。

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